アセトアミノフェン,フェナセチン


p-アミノフェノール系(非ピリン系)に属し,酸性非ステロイド消炎薬には分類されない解熱鎮痛薬.

作用機序の詳細は不明.アスピリン等のサリチル酸誘導体と同様,プロスタグランジン(PG)合成阻害作用に基づくと考えられるが,その阻害作用は弱い.末梢性よりも中枢性に働くといわれている.

アスピリンに匹敵する解熱作用と鎮痛作用を有するが,末梢系のプロスタグランジン合成阻害作用は弱いため,抗炎症作用は通常の用量においてはほとんどないとされている.

フェナセチンは,体内で速やかに代謝され,その大部分がアセトアミノフェンになる.


OTCとして,アスピリン同様の解熱鎮痛目的に使用される.

アスピリン等の酸性非ステロイド性消炎剤特有の胃腸障害が少なく,血小板機能の抑制を起こさないとされており,胃潰瘍や出血傾向のある酸性非ステロイド性消炎剤禁忌の患者に対して代用薬となりうる.

最近ではアスピリンに代わりアセトアミノフェンを主体としてエテンザミド,カフェインを配合したACE処方が用いられる.


単独成分として含まれる場合,1回最大量 300 mgの上限(1日 900 mg)まで含有されるものが多い.

大量服用時には,特にアセトアミノフェンによる肝障害が致死的となる場合があるので,至急医療機関への受診が必要.

その他,腎障害の副作用を起こすことがあるので,長期連用は避ける.


アセトアミノフェンによる過度の解熱作用により,小児が低体温をひき起こすことがあるので,解熱しないからといって続けての使用は避け,添付文書に記載されている用法・用量を守るよう注意する.

15才未満の小児の水痘やインフルエンザに伴う解熱鎮痛目的に対しては,アスピリン,サルチル酸製剤によるライ症候群発症の関連が報告されており,小児への解熱鎮痛成分として,アスピリンではなくて,アセトアミノフェンが主体となってきている.

市販の「小児用バファリンC IIR」は,アセトアミノフェン配合となっているので,医療用「小児用バファリン」(成分:アスピリン)と区別する


アセトアミノフェンはフェナセチンの代謝産物で有用性を増した薬剤であるが,米国においてフェナセチンの長期使用時腎障害が社会問題化した歴史があり,アセトアミノフェンでも,代謝物による尿細胞の障害や長期投与による腎障害等が報告されており,なるべく短期間の使用に限るよう指導すべきである.

 


参考文献:

・堀 美智子監修,OTC ハンドブック 1999-2000  −基礎から応用まで−

・田中千賀子,加藤隆一編,NEW 薬理学 改訂第3版,南江堂,1996

・第12改正 日本薬局方解説書,廣川書店,1991