抗インフルエンザ薬


インフルエンザウイルスの構造や感染機構の解明などにより,インフルエンザウイルスに対してさまざまにターゲティングする抗インフルエンザ薬が開発されている.


1.塩酸アマンタジン

・1959年に抗ウイルス薬として合成された三環系アミン.

・米国では,1966年に A 型インフルエンザウイルスの感染予防薬として許可.

・その後,パーキンソン病患者へのインフルエンザ予防投与中に,偶然にも筋固縮,振戦などに対して効果が認められたため,抗パーキンソン病薬として,臨床応用

・日本では,1975年にパーキンソン症候群の治療薬として発売され,インフルエンザ感染症に対しては,1998年11月に A 型インフルエンザ治療薬として承認,臨床使用開始


作用機序:M2 蛋白の作用を阻害することによってウイルスの脱殻および膜融合を阻害し,増殖を抑制するので,ウイルスを直接不活化するものではない. 従って,発症後48時間以降に投与を開始しても十分な効果は得られないので,可能な限り速やかに投与を開始する.

 また,M2 蛋白阻害のみであるため,当然ながら, A 型ウイルス以外には効果がなくM2 蛋白のアミノ酸遺伝子は容易に変異してウイルスが耐性化しやすいため,可能な限り短期間の使用(最長でも1週間)に留めるようにする.

重篤な副作用:自殺傾向,悪性症候群,心不全など

 てんかんなどの痙攣素因のある患者は,発作を誘発する恐れがあるため,禁忌

 催奇形性が疑われる症例報告があるため,妊婦または妊娠している可能性のある人には投与しない.


2.ザナミビル

ノイラミニダーゼ(NA)の結晶構造解析のもとに,極めて理論的に開発された,NA の阻害をターゲットとした新しいタイプの薬物.

・構造に,正に荷電したグアニジノ基を有しており,これが NA の活性部位の底面にある窪みにはまりこみ,窪みの中の負に荷電したグルタミン酸と結合することにより,しっかりと固定され,ウイルスの更なる増殖を阻害する.

 ザナミビルは荷電分子であるため,経口投与しても腸管から吸収されにくいことから,投与方法としては,吸入という形をとらなくてはならない. そのため気道以外の細胞にすでに感染している場合には,効果は期待できないので,発症後速やかに投与する必要がある.

 現在,リレンザR という商品名で,グラクソ・ウエルカム社によって臨床試験が行われており,A 型および B 型ウイルスの両方に有効な予防薬として期待される.


3.GS-4104(日本ロッシュ)

経口タイプのノイラミニダーゼ阻害剤. プロドラッグで,バイオアベイラビリティが高い. 我が国では,臨床試験準備段階


参考文献:

・廣田路子,ファルマシア,1999