グリコシルフランを出発原料とする

新規Cーヌクレオシドの合成

 

名城大学薬学部 医薬品機能化学研究室

前 波  勇

 

 糖の1位に官能基としてフランを導入し、その環変換反応による方法で新規C-ヌクレオシドの合成を計画した。本年度はグリコシルフランより2工程で得られたエナミノングリコシド(1)とセミカルバジドの反応により、リバビリン(2)のアイソスターである3-b-D-ribofuranosylpyrazole-1-carboxamide (3)およびグリコシルフランより3工程で得られたピラヌロースグリコシド(4)と1,2-ジアミノヘテロ環化合物の縮合反応により、三環性ピロロプテリジン類の合成を行った。

1)リバビリンは1972年にRobinsらによって合成報告された合成抗ウイルス剤で、DNAウイルスからRNAウイルスまで広い抗ウイルススペクトルを有する抗ウイルス剤として知られている。またその類縁体であるチアゾフリンには抗腫瘍活性が認められ、現在フェーズ IIの段階にある。これらヌクレオシドの生理活性に興味を持ちそれらの類縁体である(3) の合成を行った。エナミノングリコシド(1)はグリコシルフランの Jones 酸化によりフラノングリコシドとし、ついで、p -アミノフェノールと反応させることにより得た。エナミノングリコシドとセミカルバジドの反応では3位または5位に糖を有する2種のピラゾール N -カルボキサミドが得られた。この位置異性体の位置決定は別途合成により行った。

2)ピロロプテリジンは 5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸との構造類縁体としての興味がもたれるが簡便な合成報告は見られない。今回、フランより誘導可能な 3-ピラノン体(1)と4,5-ジアミノピリミジンの one-pot 合成により容易に得られることが明らかとなった。また、2,3- および 3,4-ジアミノピリジンとの同様の one-pot 反応で、対応する三環性化合物が得られた。なお、3,4-ジアミノピリジンとの反応により得られたpyrido[4,3-e]pyrrolo[1,2-a]pyrazine (5)は新しいヘテロ環でもある。今回の縮合閉環反応で得られた閉環体には2種の構造が考えられるが、HMBC実験によりその構造を決定した。