プリン類縁構造を持つピロロ[2,1-f][1,2,4]-

トリアジンC-ヌクレオシドの合成

 

名城大学薬学部 医薬品機能化学研究室

前波勇

 

Purine nucleoside phosphorylase (PNP) は、プリンヌクレオシドリボース 1リン 酸とプリンに可逆的に分解する酵素としてしられていて、その阻害剤はT?細胞白血病などの細胞性免疫の不全により引き起こされる疾患の治療薬としての利用が期待されている。また、天然より得られたプリン類縁構造を有するピロロ[2,3-d]ピリミジンN-ヌクレオシド(7?デアザプリンヌクレオシド)であるtubercidin (A), toyocamycin (B), sangivamycin (C) には抗腫瘍、抗ウイルス活性を有することが知られている。一方、糖部分と含窒素複素環が炭素ー炭素結合で結ばれているC-ヌクレオシドは、その構造から推測されるように化学的加水分解あるいは酵素による分解を受け難く、抗ウイルス活性、抗腫瘍活性等の興味ある生理活性を示すものが知られており、合成研究が精力的に行われている。今回は新規C-ヌクレオシド合成の一環として、7?デアザプリンヌクレオシドのisostereである3種のプリン類縁構造を持つピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジンC-ヌクレオシド(4, 5, 6)の合成を行った。

グリコシルフランより3工程で得られるピラヌロースグリコシド1 を出発原料として、アミノグアニジンとのone-pot 環変換反応により2-アミノピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジン2 を得た。2 のVilsmeier反応によりアルデヒド体を収率69%で得た。アルデヒド基の位置はHMBC実験により5位であると決定した。続いて アルデヒド体から更に2行程でニトリル体 3 へと誘導した。 2, 3 の常法による加水分解により対応する脱保護体 4, 5 を得た。63 をエタノール中、過酸化水素水とアンモニアで処理することにより高収率で得た。以上得られたピロロ[2,1-f][1,2,4]トリアジンC-ヌクレオシド(4, 5, 6)はいずれも?配置を保持していることが認められた。