薬をめぐる日本の医療状況


欧米の医科大学卒業生の研究データ  ―――> 日本の医科大学生は?

  • 約半数:不適切な疑わしい薬を処方
  • 3分の1:誤った処方せんの書き方
  • 3分の2:重要な情報を患者に伝えていない


医薬品の適正使用に対するバックグラウンド

  1. 薬の不適切な使用のために起こる副作用被害が多く,医療訴訟の件数も年々増加している.
  2. 抗生物質の乱用による,多剤耐性菌の出現など,難治性の感染症が増大している.
  3. 国民医療費が増大した結果,医療保険制度の存続が危うくなり,医療費の中でも大きな比重を占める医薬品費の抑制が真剣に検討されるようになってきた.

 ―――> 一般市民の間に消費者としての意識が高まり,医療における患者の自己決定権が強く求められるように成ってきた.


何故,適正使用が行われないか?

医学・薬学教育の問題点

治療学よりも診断学を重視考えることよりも覚えることが中心の教育 ――> 症状と薬を短絡的に組み合わせて機械的に処方するだけで,個々の薬の特性や患者の病態に注意を向けず,不適切な処方を行う医師が増加

・治療学よりも薬理学を重視.考えることよりも覚えることが中心の教育 ――> 薬の名前,性質を覚えるだけで,個々の薬の特性を生かし,患者の病態に合わせた使い方を理解できる薬剤師が少ない

宣伝と薬の乱用

・一部の製薬メーカーによる行き過ぎた宣伝・販売活動が,薬の選択や使い方に影響して,医師たちの処方行動を誤った方向に誘導

・メディアによる医薬品宣伝の受け止め方は? --- 看護学生のアンケートから

薬価差益と医薬分業

・医薬分業が行われず,医師は処方せんを書くとともに,薬を調合・販売していた.その結果,薬の公定価格(国が定めた価格)と実売価格とに大きな差が生まれ,この差が,病院・診療所の収益源(薬価差益)になっていた. ――> 薬の有効性・安全性の優劣の他に,薬価差の大小が薬の選択を左右し,また,多剤投与や長期連用が一般化した.

医療における消費者の視点

・医師が患者の薬を選ぶとき,自分の子供や親のために選択・使用するときのような慎重さがあるだろうか,メーカーの主張する有効性・安全性が適切かどうか確認する必要性

・一般消費者は,たくさん薬を処方してくれる医師を求めていないだろうか.

EBM (Evidence-Based Medicine)の重要性

・個々の治療法の有効性・安全性が,現在,どれくらいの確度で証明されているかを考慮した上で,患者の身体的・社会的条件,費用,利便性など他の条件を加味しながら,患者の受ける利益が最大になるような治療を行う


参考文献:

・浜 六郎,別府宏圀訳,世界のエッセンシャルドラッグ,三省堂,2000