薬物治療学 (医療:自由、薬:選択)

第1回 薬物治療学、臨床薬理学の目的、ヒトと薬の関係


I 臨床薬理学とは 
I-1.臨床薬理学の歴史 --- 人間回復の薬理学・治療学
 1995年:認定薬剤師制度
 1989年:GCP(医薬品の臨床試験の実施に関する基準)
      --> 臨床試験に参加する被験者の同意(IC)と治験審査委員会(IRB)設置の
        義務づけ
 1996年:ICH-GCP として、GCPの日米欧統一化
 1997年:新GCP 法制化 --> 1998年より完全実施(医薬品開発のための臨床試験の国際化)
I-2.臨床薬理学の領域
 「薬物の人体における作用と動態を研究し合理的薬物治療を確立するための科学」(1985年)
   --> 薬物治療の科学性を確立することにより合理的薬物治療を志向する学問領域
      期待される効果:@〜E(p.2)
  a.研究
   1)人体薬理学的研究 --- 薬物動態と生体の感受性に種差が存在するため
   2)臨床薬物動態学的研究
   3)臨床薬効評価に関する研究 --- EBM, 無作為化比較試験(RCT)
  b.教育 --- 医学部・薬学部、医師・薬剤師、医療スタッフ、一般人への教育・啓発
  c.その他の活動
I-3.Evidence-based medicine(EBM)
  a.EBM とは --- 現在ある最善の根拠に基づいて、かつ患者の希望・好みや価値観をも
          考慮して診療を進めていくこと、また、このための技術
  b.EBM の四つのステップ
   1)ステップ1(問題の定式化)--- 問題点を疑問に答えられる形に変換
   2)ステップ2(情報検索)--- 指導医の意見、教科書、雑誌、MEDLINE,
                 Cochrane Library(基準を満たした論文に基づく総説)
   3)ステップ3(批判的吟味)--- @ランダム化、対象の追跡率
                   A盲検化、患者背景、治療以外の各群の同等性
   4)ステップ4(患者への適用)--- 患者の背景に基づき個々に考慮

III ヒトと薬の関係
 PK-PD 解析 --- 薬理作用と体内動態の両者に、患者間でのばらつき(個人差)が存在
III-1.薬のヒトへの作用
III-2.ヒトの薬への作用 --- ADME, LADME
III-3.濃度−反応関係の解析
  a.1−コンパートメントモデル --- 最大反応の 20〜80%の部分はほぼ直線
  b.多分画モデル --- PK-PD モデル
  c.間接的薬理作用モデル

III-4.臨床薬物動態
  a.吸収、分布、代謝、排泄
   1)吸収
    a)経口製剤の吸収
    b)坐剤からの薬物吸収
    c)貼付剤からの薬物吸収
    d)吸入剤からの薬物吸収
    e)注射剤からの薬物吸収
   2)分布
   3)代謝
    a)薬物代謝の反応様式
    b)薬物代謝の個人差、遺伝的多型、人種差
    c)薬物代謝と薬物相互作用
   4)排泄
    a)腎排泄
    b)腎外排泄
   5)クリアランスの概念
  b.コンパートメント解析
   1)線形コンパートメントモデル
    a)静脈内投与 -- 1-コンパートメントモデル、2-コンパートメントモデル
    b)経口投与
    c )反復投与
   2)非線形コンパートメントモデル
  c.モーメント解析
III-5.Therapeutic drug monitoring (TDM)
  a.血中薬物濃度の意義 --- 血中薬物濃度に影響する要因(表III-2)
  b.TDM の臨床的背景 --- TDM の対象となる薬物(表 III-3)
  c.血中薬物濃度測定法
  d.投与量・投与方法の再設定 --- 母集団薬物動態論(population PK)、ベイズ法
  e.TDM による薬物投与計画(表 III-18)
  f.EBM に基づく処方設計
    ・TDM を行い血中濃度を科学的に解析することにより、薬効発現の最大化、治療
     リスクの最小化、治療個別化の最速化などの臨床上の有用性。 
    ・QOL の向上、生存率の上昇、費用便益比の低下、医療コストの削減などの医療
     上の有用性。

第2回 医薬品の開発、有害反応の情報収集と伝達、科学性・倫理性の調和

I-4.科学性と倫理性の調和