平成16年度 臨床薬物治療学 II 定期試験


問1〜31までの設問の解答は、以下の10個の選択肢の中から選ぶこと。(1問3点)
      a b c d
    1.正 正 正 正
    2.正 正 誤 誤
    3.正 正 誤 正
    4.正 誤 正 正
    5.正 誤 誤 正
    6.誤 正 正 正
    7.誤 正 正 誤
    8.誤 正 誤 正
    9.誤 誤 正 誤
    0.誤 誤 誤 誤

問1.薬物治療学の基本原則について、正しい組合せはどれか。
 a.治療の対象は、病気であり、人間(病人)である。
 b.物質の科学だけでなく、安全な使い方の科学の確立が必要である。
 c.治療は、固定した価値観に基づいて治療計画を立てなければならない。
 d.どの薬物を使うかを考える前に、薬物を使わなければならないかどうかを考えることが大切である。

問2.EBMについて、正しい組合せはどれか。
 a.EBMとは、患者の希望・好みや価値観には左右されないように、現在ある最善の根拠に基づいて、診療を進めていくこと、また、このための技術である。
 b.最初のステップとして、問題の定式化(疑問の明確化)を行う。
 c.情報の批判的吟味では、盲検化がされていれば、ランダム化はそれほど重要ではない。
 d.ITT解析では、全ての患者で解析を行う。

問3.次の医薬品開発に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.第1相試験では被験薬の最大安全量や体内動態、場合によっては薬物相互作用などが検討される。
 b.治験の第 II 相試験では、通常、無作為化二重盲検比較試験が必要である。
 c.臨床試験は、すべて、被験薬の適応対象となる患者によって行われる。
 d.臨床試験において、試験薬の投与とは関係がない不都合な出来事についても、有害事象として記録する必要がある。

問4.ヘルシンキ宣言に関する次の記述のうち、正しい組合せはどれか。
 a.治験に限らず、ヒトを対象としたすべての臨床試験の倫理的規範である。
 b.臨床試験の実施に当たり、被験者から自由意志による口頭または文書での同意が得られることが必要である。
 c.学術的な知識を深め、かつ苦しんでいる人々を助けるためには、研究室での試験から得られた成果を人に応用することは必要欠くべからざるものである。
 d.医学の進歩は研究に基づいているが、これらの研究の一部なりとも最終的には、ヒトを対象とした試験によらなければならない。

問5.臨床試験(治験)に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.IRBは、5名以上の医学、歯学、薬学その他の医療又は臨床試験に関する専門的知識を有する者で構成しなければならない。
 b.IRBによる試験実施計画書と同意のための説明文書の承認は、臨床試験実施の必須要件である。
 c.臨床試験(治験)実施の責任は、基本的に製薬会社にあり、治験実施に関わるすべての責任主体は製薬企業である。
 d.治験の途中、患者から治験薬の投与量を減らして欲しいという要望があれば、患者の利益を考え、担当医師は投与量を変更してもよい。

問6.医薬品の有害反応に関する次の記述について、正しい組合せはどれか。
 a.有害反応とは、「常用量の薬物の投与により、患者に起こるすべての望ましくない効果あるいは有害な効果」と定義され、副作用を意味する。
 b.アレルギーとは、「ある特定の薬物あるいはその構造類似物質によって前もって感作(免疫)された個体が、免疫機序に基づいて起こす有害反応」のことをいう。
 c.I型のアレルギーは、アナフィラキシー型である。。
 d.潰瘍性大腸炎は、二次的有害反応の症状、菌交代症の1つである。

問7.次の用語は、医薬品の副作用として添付文書中に用いられることがある。用語とその意味の対応の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.Stevens-Johnson 症候群 ------- 発熱などの全身症状とともに皮膚の表皮が急速に障害され、紅斑、水泡、びらんを生じる。
 b.麻痺性イレウス ------- 手指がふるえる、よだれがでる、表情が変化する。
 c.悪性症候群 ------- 心電図上でQT時間が延長。多形性心室頻拍。
 d.torsades de pointes ------- 高熱、発汗、頻脈などの自律神経症状と手足の振戦、筋硬直などの錐体外路症状を呈する。進行すれば、多臓器不全となる。

問8.次の薬物相互作用の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.ワルファリン服用中にクロレラ食品を食べるとワルファリンの抗凝血作用が減弱することがある。
 b.長期喫煙者では、テオフィリンの気管支拡張作用が増強されることがある。
 c.スクラルファートをニューキノロン系抗菌薬とともに服用すると、抗菌薬の吸収が阻害される。
 d.シメチジンは、薬物代謝酵素のCYP3A4を阻害するので、同じ酵素で代謝されるフェニトインの血中濃度が高くなる。

問9.60歳、男性。朝食中に右手がうまく使えないことを自覚。様子をみるも昼頃には右上肢全体が麻庫し、言葉がうまく出てこなくなった。
身体所見:身長160 cm、体重72 kg、心拍数 72/分不整、血圧 140/84 mmHg、上肢に強い右片麻痺と、運動失語を認めた。
検査所見:心電図:左心室肥大、尿検査:糖(2+)、血算・一般血液生化学:異常なし、空腹時血糖132 mg/dL、脳MRI: 左中大脳動脈領域のT2高信号病変。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.MRI所見より、糖尿病を伴う脳梗塞と診断される。
 b.脳血栓は、動脈硬化が原因で起こることが多く、TIA は脳血栓の前駆症状として重要である。
 c.脳保護薬のエダラボンは、脳血管障害が発症して24時間以内に投薬を開始すべきであり、腎機能障害に十分な注意が必要である。
 d.平均動脈圧は130以上を維持した方が良い。

問10.20歳、男性、学生。授業中突然椅子から落ち、床に手足を突っ張り、眼球を上転していたが、やがて手足をがくがくさせる痙撃を生じた。約1分ほどで静かになり、そのまま眠ってしまった。覚醒後、まったく発作のことは覚えていなかった。
身体所見:異常なし。
検査所見:尿血液一般検査:正常、脳波:深呼吸負荷にて全般性の棘波が出現、脳MRI:正常
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.神経所見なく、脳MRIが正常であることから、原因不明あるいは本態性のてんかんの可能性が高い。
 b.種々の成因によってもたらされる慢性・反復性の脳疾患で、大脳皮質ニューロンの過剰活動(過剰放電)に由来する発作を主徴とする。
 c.小発作の症状が出ているので、フェニトインでの治療を考える。
 d.フェニトインの体内動態は、臨床に使われている薬用量の範囲では非線形性を示さず、治療域は、血中濃度で10〜20 μg/Lである。

問11.パーキンソン病とその治療薬に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.パーキンソン病は振戦、筋固縮、多動、便秘、排尿障害を主徴とする進行性の神経変性疾患である。
 b.症状が進行すると、アセチルコリン作動性神経が変性し振戦が見られるので、抗コリン薬を処方する。
 c.進行すると、縫線核のノルエピネフリン、青斑核のセロトニンなどの減少を認める。
 d.ブロモクリプチンなど、ドパミン受容体刺激薬を長期に投与すると、wearing-off 現象、on-off 現象、遅発性ジスキネジアなどの副作用が見られる。

問12.58歳、男性、会社役員。家族歴に類症はなし。アポイントメントを忘れてしまうことが重なってきた。
身体所見:患者は病識なし。高度の記銘力低下、見当識障害を認めるが、ほかに神経学的異常なし。
検査所見:血液・尿の一般検査では、異常なし。脳MRIにて、側脳室下角の拡大があり、側頭葉内側面の萎縮が認められた。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.この症例では、脳血管性痴呆が最も考えられる。
 b.脳MRI所見で、タウ蛋白質含有の神経原線維変化やβ-アミロイド蛋白含有の老人班が認められる。
 c.塩酸ドネペジルは、アルツハイマー病の治療薬として許可されている。
 d.動揺性、段階的・階段状に悪化する経過を示し、痴呆が徐々に進行する神経変性疾患である。

問13.28歳、女性、会社員。疲れやすく、夕方になると、ものが二重に見えるようになった。
身体所見:外眼筋、眼輪筋、頸部前屈筋、四肢帯の筋力低下を認めるも、筋萎縮なく、腱反射も正常。
検査所見:尿・血液一般検査:正常、血清抗アセチルコリン受容体抗体:陽性、胸部X線/CTにて胸腺腫の疑い、筋電図:三角筋にてwaning陽性、テンシロン試験: 陽性。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.検査所見などから、慢性疲労症候群と診断できる。
 b.筋の易疲労性、筋障害分布、テンシロン試験陽性、筋電図所見、抗アセチルコリン受容体抗体陽性がこの疾患で特徴的な項目である。
 c.治療には、塩化エドロホニウムを用い、必要に応じて副腎皮質ステロイドを用いる。
 d.根治療法として、胸腺の摘出も考慮される。

問14.うつ病とその治療に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.うつ病患者には、やる気を起こさせるような工夫が大切である。
 b.抑うつ気分、興味・意欲低下、不安・焦燥など精神的症状と過眠、食欲増加などの身体症状がみられる。
 c.抑うつ気分、自信喪失、思考力低下、自殺企図等の症状は、一時的なものである。
 d.SSRIは、緑内障、尿閉、前立腺肥大、高度な慢性の便秘を持っている患者には原則禁忌である。

問15.統合失調症の病態と治療に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a.急性期の症状は、アセチルコリン作動性神経の過剰活動によるものと推定されている。
 b.陰性症状には、感情の平板化、自閉、意欲の低下がある。
 c.主として思春期から壮年期(15歳から30歳)までに発病し、特に20歳前後に好発する。
 d.慢性期の陰性症状に対しては、ペルフェナジン、クエチアピン、オランザピンなどが有効とされる。

問16.25歳、女性、会社員。主訴: 突然の動悸で苦しくなる。既往歴:とくになし。生来健康。
現病歴:3ヵ月前、買い物をしていたところ、突然、動悸、息苦しさ、胸がつまるような感じがし、死ぬかもしれないという不安におそわれた。救急車で病院を受診した。診察、検査されたが、とくに異常所見は認められず、そのうち、動悸もおさまったので帰宅した。それ以来、しばしばなんの誘因もなく動悸、息苦しさを伴う不安発作におそわれ、何度となく病院へかけこんだ。しかし、再三の精密検査でも異常はみつからなかった。何度となく発作が起こるので不安になり、一人では外出できなくなってしまった。紹介により、精神科を受診した。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.パニックディスオーダーと同様の症状を示すが、性格の特徴、心因となるトラブルもないことから、不安神経症と診断できる。
 b.うつ病,統合失調症などの初期症状との鑑別が大切である。
 c.アルプラゾラムは、GABA受容体に結合して抑制性神経機能を遮断することにより、抗不安効果を示す。
 d.パロキセチンは、パニックディスオーダーに有効性が認められている。

問17.心不全の病態と治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.主な心不全の兆候として、起坐呼吸、心縮小、頚部動脈の怒張、肺うっ血、肺野聴診時のラ音などが見られる。
 b.左心不全がある場合には、体循環にうっ滞が認められる。
 c.心不全に伴いレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性が活性化される。
 d.左室収縮機能不全には、ACE阻害薬やアンギオテンシンII受容体遮断薬は効果がない。

問18.不整脈の病態と治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.心臓の電気的興奮は、房室結節がぺースメーカーとして働き、左脚・右脚、His束、プルキンエ線維を経て心室全体に伝える。
 b.PQ間隔は、房室伝導時間の指標となる。
 c.アミオダロンには、突然死の予防効果が報告されている。
 d.ジソピラミドなど、Ia 群の抗不整脈薬では、抗コリン作用による催不整脈作用が問題となる。

問19.心筋梗塞の病態と治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.急性心筋梗塞は発症後数時間以内なら、血栓溶解療法や経皮的冠動脈形成術(PTCA)によって、再疎通療法を行う。
 b.非常に激し胸痛があり、発作は狭心症とは異なり、安静にしてもニトログリセリンを投与しても寛解しない。
 c.心電図の特徴的なパターンとして、ST下降、異常Q波、冠状T波の順に出現する。
 d.心不全患者や心機能が低下した患者に対しては、β遮断薬(カルベジロールなど)やアンジオテンシン変換酵素阻害薬が有効である。

問20.78歳、男性、無職。約20年前より160/95 mmHg程度の高血圧を指摘されていたが、降圧薬は断続的に服用していたのみであった。最近、血圧が以前より上昇してきた。
身体所見:身長160 cm、体重70 kg、心拍数74/分、血圧200/89 mmHg。
検査所見:心電図:左室肥大、胸部X線:心胸郭比56%、尿所見:タンパク(±)、糖(−)、血清生化学所見:血液尿素窒素30 mg/dL、クレアチニン1.4 mg/dL、尿酸5.6 mg/dL、Na 138 mEq/L、K 3.8 mEq/L、Cl 100 mEq/L、総コレステロール221 mg/dL、中性脂肪150 mg/dL、HDL 52 mg/dL
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.この患者の高血圧の治療の目標は、まず薬物治療で血圧を130/85 mmHg 未満にすることである。
 b.高血圧は動脈硬化、脳血管障害、狭心症、心筋梗塞のリスクファクターとして重要である。
 c.高齢なので、長時間作用型のCa拮抗薬であるジルチアゼムを処方した。
 d.左室肥大が認められる症例なので、イミダプリルやトリクロルメチアジドも選択される。

問21.38歳、男性、会社員。数ヵ月前からほぼ連日にわたり、夜間に喘鳴を伴う呼吸困難で目が醒めるようになり、また労作時にも発作性に喘鳴を伴う呼吸困難を自覚するようになった。半年前よりハムスターの飼育をはじめている。
身体所見:身長170 cm、体重70 kg。
検査所見:尿所見:タンパク(-)、糖(-)、沈渣異常なし。血液生化学的所見: 末梢血白血球6,500/mm3。 血清IgE: 340 IU/L、特異的IgE抗体(RAST法):ハウスダスト(+)、ダニ(+)、スギ(2+)、ネコ上皮(+)、ハムスター上皮(+)。呼吸機能検査: %肺活量:85%、1秒率68%。ピークフローPEF値:(起床時) 370L/分、(%予測値60%)、(就寝時)480 L/分、(%予測値78%)。胸部X線写真:異常なし。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.この患者の病態は、気道の急性炎症による気道過敏性の亢進と考えられ、発作的な気道収縮を伴っていると考えられる。
 b.喘息の原因には、乳幼児など低年齢層に多く見られるアトピー型(アレルギー性)と壮年期以降に多く見られる非アトピー型(非アレルギー性)がある。
 c.気管支喘息の急性気管支痙攣には、β2作動薬が,より強力で速効性の作用を示すので第一選択薬として用いられる。
 d.経口副腎皮質ステロイド剤は、気道炎症を鎮静化し、気道粘膜を正常化、リモデリングの予防・治療に有効である。

問22.76歳、男性、重喫煙者。数年前からの労作時呼吸困難を主訴に受診。
身体所見:身長165 cm、体重50 kg、胸部聴診:呼吸音減弱。
検査所見:胸部X線:過膨張、横隔膜平低化、心電図:肺性P波、呼吸機能検査:%肺活量75、1秒率45%、%肺拡散能60、動脈血液ガス(大気吸入下): pH 7.41、PO2 55 Torr、PCO2 49 Torr。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.この患者は、COPDの一つである慢性気管支炎と診断される。
 b.COPDに起こっている病理学的な変化は、不可逆的な変化である。
 c.治療としては、まず禁煙を指導し、呼吸訓練を指導する。
 d.この症例の患者においては、抗コリン薬は、β2受容体作動薬よりも優れている。

問23.72歳、女性。胸やけ、胸痛、食欲不振。現病歴は約1年前から、ときに胸やけを自覚していた。半年前から胸痛も出現。10日前から食欲不振となった。
身体所見:身長152 cm、体重40 kg、体温36.9℃、血圧142/80 mmHg、心拍数80/分、整。胸部、腹部異常所見なし。
検査所見:血液検査:末梢血;白血球 5,300/mm3,赤血球 352万/mm3、Hb 10.2 g/dL、 Ht 32%、 血小板 32万/mm3。生化学検査:AST(GOT) 25 U/L、ALT(GPT) 20 U/L、コリンエステラーゼ 295 U/L、総タンパク6.1 g/dL、アルブミン2.9 g/dL、総コレステロール92 mg/dL。 上部消化管X線造影検査:食道裂孔ヘルニアと食道粘膜不整を認める。上部消化管内視鏡検査:食道の発赤した粘膜と、広範な全周性の潰瘍形成を認める。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.加齢により、下部食道括約筋圧が低下し、逆流性食道炎を起こしたものと考えられる。
 b.出血の危険があるので、すぐにオメプラゾールの投与を開始する。
 c.食欲不振があるので、消化酵素剤も処方した。
 d.オメプラゾールの服用を独断で中止すると、症状が悪化することがある。

問24.消化性潰瘍の病態と治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.H. pylori 感染は、胃・十二指腸潰瘍のリスクファクターである。
 b.ピロリ菌の除菌には、アモキシシリン、クラリスロマイシンの抗生物質2剤とラニチジンの3剤併用療法が用いられる。
 c.胃潰瘍の場合、空腹時に疼痛(心窩部痛)が起こることが多い。
 d.オメプラゾールを代謝する酵素には、遺伝子多型が存在し、日本人では15〜20%のPM(poor metabolizer) が存在する。

問25.52歳、男性、会社員。24歳時、十二指腸潰瘍で手術、輸血を受けている。飲酒歴なし。40歳のときに会社の検診にて肝機能異常を指摘され、他医にて慢性肝炎と診断され加療中、精査のために紹介された。
身体所見:意識清明。黄疸なし、貧血なし。正中でやや硬い肝を2横指触知する以外特記すべきことなし。浮腫もない。
検査所見:血液生化学所見:総タンパク 7.0 g/dL、アルブミン 4.0 g/dL、ガンマグロブリン 1.8 g/dL、ALT 74 IU/L、ALT 66 IU/L、総ビリルビン 0.9 m g/dL、コリンエステラーゼ 320 IU/L、プロトロンビン時間70%、HCV抗体陽性。血算:赤血球420 万/mm3、 Hb 14.2 g/dL、Ht 42%、血小板 9万/mm3。ICG 15分値22%。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.非代償期の肝硬変が疑われる。
 b.肝硬変を消失させるために、ウルソデオキシコール酸を処方した。
 c.この患者の肝硬変の病因は、24歳の時に受けた手術時にあると考えられる。
 d.脳症の予防に、芳香族アミノ酸製剤を処方した。

問26.肝炎の病態と治療に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
 a. B型肝炎ウイルスは、主に非経口的に感染し、多くはHBs抗体陽性となり治癒する。
 b.インターフェロン製剤はB型およびC型肝炎に用いられるが、完全寛解は半数以下である。
 c.B型肝炎ウイルスでは肝炎の慢性化率が高く、また、肝硬変や肝癌に進展する頻度も高い。
 d.ラクツロースは腸内細菌によるCO2の産生を抑制するため肝性脳症を改善する。

問27.32歳、男性。前夜大量飲酒し、夜間より発熱、嘔吐および上腹部に激痛が出現し、入院した。
検査所見:白血球 18,000 /mm3、アミラーゼ 3,240 単位/L。腹部X線単純撮影で、消化管ガス像の著明な増加を認めた。?
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.アルコールの過飲によってペプシンや胃酸などの分泌が増加し、膵外分泌亢進とともに、膵組織内で酵素が活性化され、自己消化を引き起こしたと考えられる。
 b.急性膵炎から慢性膵炎への原因として、半数以上がアルコールの大量摂取によるものと考えられている。
 c.急性膵炎の際は、絶飲絶食、胃液吸引を行い、5-HT2受容体拮抗薬を投与し、疼痛の緩和には、鎮痛坐薬や麻薬を用いる。
 d.アミラーゼを正常化させるために、ファモチジンを静脈内投与する。

問28.炎症性大腸炎の病態と治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.潰瘍性大腸炎は、20〜40歳台に好発する。
 b.下部大腸の潰瘍性大腸炎の治療にプレドニゾロンが注腸されることがある。
 c.抗菌薬投与による腸内細菌叢の変化により、偽膜性大腸炎が生じることがある。
 d.メサラジンは、LTB4の生合成を抑制し、炎症性細胞の組織への浸潤を抑制する。

問29.35歳、女性、主婦。昼食(うな丼)摂取後より、突然、右季肋部痛、背部痛が出現した。
身体所見:身長160 cm、体重59 kg、血圧 146/90 mmHg、脈拍 90/分、体温36.8℃。
検査所見:貧血(-)、黄疸(-)、胸部に特記所見なし、腹部では右季肋部に軽度圧痛を認める。末梢血、肝機能、腎機能、血中アミラーゼ、尿検査:異常なし、総コレステロール255 mg/dL、HDL-コレステロール88 mg/dL中性脂肪145 mg/dL、血糖 110 mg/dL、CRP陰性、心電図:異常なし、腹部単純X線撮影、腹部CT:異常なし、腹部超音波検査:胆嚢頸部に5-15 mm大の堆積した結石像を多数認めたが、胆嚢の腫大、壁肥厚は認めず。また胃壁の肥厚および膵腫大も認めず。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.胆石症は、過剰の脂肪食などによるコレステロール代謝の異常、胆汁の過剰生成、十二指腸の炎症により発生することが多い。
 b.胆石とは、コレステロールを主成分として、胆道系に生じた固形物の総称である。
 c.胆石による疼痛への対策は、軽度の場合は中枢性の鎮痛薬、激しい場合は鎮痙薬を思い用いる。
 d.胆石の直径が大きい場合は、ケノデオキシコール酸などで溶解する。

問30.60歳、女性、主婦。1ヶ月前から四肢近位筋の筋力低下、筋委縮、疼痛を認めた。CPK 571 IU/Lと上昇。筋生検にて多発性筋炎と診断され、プレドニゾロン 60 mg/日より投与開始された。症状軽快し、以後2週に5 mgの割合で減量、プレドニゾロン30 mg/日となったところで、動作時の胸背部痛が出現するようになった。
身体所見:背部(下位胸椎レベル)に叩打痛を認めた。
検査所見:血液生化学的所見:総タンパク6.0 g/dL、アルブミン3.5 g/dL、ALP 146 IU/L、Ca 8.4 mg/dL、P 3.0 mg/dL、骨塩量(DXA法): 0.501 g/cm2 、胸椎X線写真: 骨量低下と第8胸椎に圧迫骨折。
 次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.この症例では、骨構成成分の絶対量は変らないが、骨塩量が低下していると考えられる。
 b.閉経後の骨粗しょう症患者に、エストロゲンの補充療法を行うと骨量減少が抑制される。
 c.副腎皮質ステロイドを大量に長期間投与すると、腸管からのカルシウム吸収が阻害され、尿中へのカルシウム排泄が促進される。
 d.エルカトニンは、破骨細胞を減少させることなどによって、骨吸収を抑制し、骨芽細胞の骨形成を促進するとともに、疼痛緩和にも有効である。

問31.慢性関節リウマチの治療に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
 a.慢性関節リウマチの第1選択薬は、酸性非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である。
 b.プレドニゾロンは、感染症、消化性潰瘍、緑内障、高血圧症、血栓症などに原則禁忌である。
 c.インドメタシンファルネシルは、直接シクロオキシゲナーゼに作用して阻害作用を示す。
 d.ブシラミンは、サプレッサーT細胞機能を活性化し、リウマトイド因子、CRPの改善などを示す疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)である。

問32.試験の中の症例を一つ選び(問題番号を書いて下さい)、気がついた点をマークシート用紙の裏に記入して下さい。(7点)


※この問題の解答例は、以下のURL に掲載する予定です。
 http://www-yaku.meijo-u.ac.jp/Research/Laboratory/chem_pharm/mhiramt/EText/Pharmacol/AppTherap.html
※再試験は、定期試験問題から出しますが、穴埋め式にする予定ですので、内容まで理解して良く勉強をしておいて下さい。