平成14年度 薬物治療学 追・再試験問題

問1.次の医薬品開発に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.臨床試験は、すべて被験薬の適応対象となる患者によって行われる。
 b.臨床試験は、GCP(Good Clinical Practice)の遵守のもとに行われる。

問2.次の用語の英訳を記せ。
 a.治験コーディネーター (           )
 b.医薬情報担当者 (           )

問3.ヘルシンキ宣言に関する次の記述のうち、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.医学の進歩は研究に基づいているが、これらの研究の一部なりとも最終的には、ヒトを対象とした試験によらなければならない
 b.臨床試験の実施に当たり、被験者から自由意志による口頭での同意が得られることが必要である。

問4.臨床試験(治験)に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.新規薬物でも海外で十分に効果が報告されている場合には、インフォームド・コンセントを取得する必要はない
 b.治験の途中、患者から治験薬の投与量を減らして欲しいという要望があれば、患者の利益を考え、担当医師は投与量を変更してもよい

問5.以下の薬物に対して出された緊急安全性情報で問題となった副作用は何か。
 a.トログリタゾン (           )
 b.オランザピン  (           )

問6.医薬品の有害反応に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.ある薬物のみを中止して症状や異常検査所見が改善すれば、中止した薬物が被疑薬と考えられる
 b.被疑薬を用いた皮内テストは、皮膚以外に発現する副作用においてもその薬物に対するアレルギー反応の存在を示し、信頼性が高い

問7.薬物アレルギーに関する次の記述のうち、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.症状が同じであれば、その機序や原因薬物は同一と推定できる
 b.細胞障害型のアレルギー反応には、感作されたT-リンパ球とマクロファージが関与している。

問8.医薬品の副作用として添付文書中に用いられる以下の用語の意味を記せ。
 a.Stevens-Johnson 症候群 (           )
 b.悪性症候群 (           )

問9.次の薬物相互作用の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.ワルファリン服用中に納豆を食べるとワルファリンの抗凝血作用が増強することがある。
 b.ドキシサイクリンなどのニューキノロン系抗菌薬を牛乳とともに服用すると、作用の減少が見られる。

問10.薬物相互作用に関する次の記述のうち、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.プロベネシドを投与すると、尿細管細胞の有機カチオントランスポートにおいて競合阻害が起こるので、セファロスポリンの血中濃度が高くなる。
 b.リファンピシンの連用により薬物代謝酵素のCYP2D6が誘導され、デキストロメトルファンの作用が弱くなる

問11.薬物代謝に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.薬物代謝酵素の遺伝的多形(genetic polymorphism)によって親化合物の血中濃度時間曲線下面積(AUC)は変化するが,代謝物のAUCは変化しない
 b.高齢者の腎機能の評価には血清クレアチニン値が良い指標となる

問12.病態による投与設計に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.肝障害時には、塩基性薬物に対する主要な結合タンパクであるアルブミン濃度が低下するので、タンパク結合率が高い薬物の血中遊離薬物濃度が増加する可能性がある。
 b.典型的な腎不全状態では、α1-酸性糖タンパク(AAG)はむしろ減少する。

問13.脳血管障害とその治療薬に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.脳梗塞のうち脳塞栓症は、動脈硬化をきたした脳血管局所に血栓が形成されて血管を閉塞することによって生じる。
 b.脳内出血の急性期には、消化管出血予防の目的で、ファモチジンが用いられる

問14.パーキンソン病とその治療薬に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.パーキンソン病は、黒質のアセチルコリン作動性神経に変性が見られる進行性の神経変性疾患で、振戦、筋固縮、無動、姿勢・歩行障害などの運動症状を主徴とする。
 b.L-DOPA を長期に投与すると、wearing-off 現象、on-off 現象、遅発性ジスキネジアなどが見られる。

問15.老年期痴呆とその治療薬に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.アルツハイマー病は、麻痺、運動失調症、感覚障害などの神経症候を示し、痴呆が徐々に進行する神経変性疾患である。
 b.最近の事柄に対する記憶の障害と失見当識が末期アルツハイマー型痴呆の特徴である。

問16.精神分裂病(統合失調症)の病態と治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.急性期の症状は、コリン作動性神経の過剰活動によるものと推定されている。
 b.塩酸クロルプロマジンは、陰性症状に著効を示す

問17.うつ病の治療に用いられる薬物に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.塩酸ミルナシプランは、セロトニンとドパミン作動性神経終末で特異的にセロトニンやドパミンの再取り込みを抑制する。
 b.マレイン酸フルボキサミンは、うつ病やパニック障害に適応を持つ四環系抗うつ薬であり、MAO阻害薬との併用は禁忌である。

問18.心身症・神経症についての記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.身体の機能障害に対する治療に抵抗を示すことが多い
 b.抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬のみらなず、抗精神病薬、炭酸リチウムやα遮断薬の使用によって軽減することがある。

問19.てんかんの病態と治療に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.欠神発作(小発作)は、けいれんを伴わない数秒間の意識消失を伴う発作であり、小児に多い。
 b.抗てんかん薬の投与は、作用機序の異なる複数の薬物を併用するのが原則である。

問20.心不全の病態と薬物療法に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.心不全の兆候として、起坐呼吸、心縮小、頚部静脈の怒張、肺うっ血などが見られる。
 b.心不全に伴いレニン・アンギオテンシン・アルドステロン系の活性が亢進する

問21.不整脈の病態と薬物療法に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.P波に異常がみられると、心房性の不整脈の可能性が大きい。
 b.アミオダロンでは、間質性肺炎や肺線維症などの重篤な副作用が発現することがある。

問22.虚血性心疾患とその治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.労作性狭心症では心電図上ST波が下降し、心筋梗塞ではST 波が上昇することが多い。
 b.狭心症の痛みは、労作時のみに起こり、就寝中や安静時には起こらない

問23.心筋梗塞の病態とその治療に用いられる薬物に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.心電図の特徴的なパターンとして、ST上昇、異常Q波、冠状T波の順に出現する。
 b.ジルチアゼムには心機能抑制作用もあり、心仕事量を軽減し、心筋酸素消費量を減少させることが期待できる。

問24.高血圧症の病態とその治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.高血圧の治療は、まず薬物治療で血圧を130/85 mmHg 未満にすることを目標とする。
 b.カンデサルタンシレキセチルは、アンギオテンシン変換酵素を阻害することによりアンギオテンシンII の生成を抑制し、血圧を下げる。

問25.かぜ症候群の治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.通常かぜ症候群は、細菌感染により引き起こされる。
 b.ザナミビルやオセルタミビルは、A型のみのインフルエンザウイルスのノイラミニダーゼの作用を特異的に阻害し感染拡大を阻止する。

問26.気管支喘息の病態とその治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.気管支喘息の原因は、気道の急性炎症による気道過敏性の亢進と考えられており、炎症細胞の浸潤と気道上皮剥離が特徴的である。
 b.オザグレルは、COX合成酵素阻害作用により、抗アレルギー作用を示す。

問27.骨粗鬆症とその治療薬に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.閉経後骨粗鬆症は、骨形成が骨吸収に比べて相対的に亢進した結果、骨量が減少する疾患である。
 b.エチドロン酸二ナトリウムは、ヒドロキシアパタイトの結晶形成を亢進し、破骨細胞の機能を抑制する

問28.慢性関節リウマチ(RA)とその治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.関節局所の炎症性の疾患で、寛解・再燃を繰り返しながら徐々に軟骨・骨破壊へと進行する進行性の疾患である。
 b.疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)は、効果が現れるまでに1〜2週間かかる

問29.胃炎、消化性潰瘍の治療薬に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.オメプラゾールを代謝する酵素には、遺伝子多型が存在し、日本人では15〜20%のPM(poor metabolizer) が存在する。
 b.クエン酸モサプリドは5-HT2受容体を刺激し、消化管運動を促進し、胃排出促進作用を示す。

問30.胃炎とその治療薬に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.テプレノンや塩酸セトラキサートは、胃粘液増加、胃粘膜血流改善および胃粘膜プロスタグランジン増加作用を有する。
 b.ピロリ菌の除菌には、ラニチジン、アモキシシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法が用いられる。

問31.肝炎の病態と治療に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a. C型肝炎ウイルスは、主に食物や飲料水を介して経口的に感染する。
 b.ラクツロースは腸内細菌によるアンモニアの産生を抑制するため肝性脳症を改善する。

問32.胆道系疾患と治療に関する記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.腸内細菌によって生じる二次胆汁酸は、胆石形成の原因となる
 b.胆石とは、ビリルビンカルシウムを主成分として、胆道系に生じた固形物の総称である。

問33.膵炎の病態と治療に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a. 急性膵炎では、アミラーゼ、リパーゼ、エステラーゼなどの酵素値が高くなる。
 b.急性膵炎の際は、絶飲絶食、胃液吸引を行い、D2受容体拮抗薬を投与し、疼痛の緩和には、鎮痛坐薬や麻薬を用いる

問34.慢性腎不全で認められる以下の症候に用いられる治療薬を記せ。
 a.腎性貧血 (           )
 b.骨病変治療 (           )

問35.ネフローゼ症候群の病態と治療に関する次の記述について、下線部分に誤りがあれば直し,正しければ解答欄に“正”と記せ。
 a.主要な病態は、糸球体障害の結果起こってくる蛋白漏出と高蛋白血症、その結果見られる浮腫、高脂血症、血液凝固の亢進である。
 b.腎保護作用を期待して、ACE阻害薬や利尿薬が用いられる。

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問35までで60点以上正解の方は合格です(1問3点)。問36〜問41.の問題は点を出すためのボーナス問題ですので、勉強してきた方は、薬剤師になったつもりで適切と思われる薬物治療、服薬指導における注意点などを書いて下さい。(裏面に書いても結構です)

問36.36歳女性、躁うつ病。7年前より気が滅入ってきたと訴え、徐々に意欲低下、頭重感、胸のつかえ感が出現した。同時に食欲が減退し、体重も減少してる。15歳ごろから躁状態、うつ状態を繰り返し、高校を中退している。高校1年のときに精神科を受診したが、すぐに通院をやめてしまっている。今回、自分から受診してきたが、希死念慮が認められている。この患者には、どのような薬物治療が考えられるか。

問37.45歳の男性。3日前より38 ℃の発熱、咳嗽、喀痰や咽頭痛が出現した。安静にしていたが、昨夜より39 ℃の発熱、黄色の喀痰、咳嗽や咽頭痛も強度となり受診した。細菌性咽頭炎、急性気管支炎の疑いがあると診断され、セフェム系の抗生物質と抗炎症薬が3日間処方された。この患者への服薬指導、薬物治療に関して、気をつけなければいけない点およびポイントは何か。

問38.82歳の男性。約1ヶ月前から咳や微熱・倦怠感があり、かぜと思って市販薬を服用していたが、症状が続くため受診したところ、結核と言われて入院した。諸検査の結果、痰の塗抹検査陽性、肺には空洞もあった。どのような治療がなされるべきか、また、その治療において、どのような点に注意すべきか。

問39.59歳の男性、大酒家。飲酒後、突然上腹部痛が生じ、嘔吐、悪心も見られたため来院した。痛みは背部から左肩まで放散する。体温37.8 ℃、赤血球450万個/μL、白血球24000個/μL。血液生化学的所見:Ca 6.5 mg/dL,アミラーゼ4500単位(正常360単位以下)、リパーゼ750単位(正常190単位以上)。
この疾患の治療としてどのような処置が考えられるか。

問40.45歳の主婦、夫と2人暮らし。3年前に慢性腎炎と診断され入院したが、その後放置していた。4日前からかぜ気味で微熱があり、昨日から四肢と顔面の浮腫が出て来たため来院した。現在入院後2日目である。自覚症状は、四肢と顔面の腫れぼったさだけである。T=37.5℃、P=78/分、BP=160/90 mmHg、検査データは、血液総蛋白値 4.3 g/dl、血清アルブミン値 2.3 g/dl、尿蛋白 4.0 g/日である。入院時より食事療法(蛋白質 80 g/日、食塩 3〜5 g/日)が開始され、安静度は、洗面所とトイレのみ「歩行可」である。3日後に腎生検が予定されている。また、本日より、プレドニゾロン(40 mg/日)とワルファリン 3 mg/日の内服が開始された。
この患者で注意すべきことは何か。

問41.M.H. は、55歳、体重70 kg の男性であり、心窩部痛を訴え外来で診療所を訪れた。さしこみ痛を訴えており、その痛みは2週間ごとに現れ、2週間持続した。受診に訪れたときは、しばらく症状が消えていた時期であった。痛みのため、しばしば夜中に目覚め、冷蔵庫にあるものを食べた。通常、食事をした後は、痛みも静まり眠りについた。
M.H. には、重篤な喘息と不整脈の既往歴がある。薬物療法として、プロカインアミド(1,000 mg)を、6時間ごと、テオフィリン(600 mg)を、1日2回、頭痛がする時は、アスピリンを服用している。
M.H.は、薬の服用を忘れることがあるが、思い出した時にいつでも服用している。彼の喫煙歴は、1日10本程度、また、1日10杯のコーヒーを飲んでいる。夜には、夕食前に2杯のマティーニを、夕食後には、シェリー酒を飲んでいる。定期健康診断の結果は、正常範囲内である。

臨床検査所見:
ヘモグロビンが 15 g/dL(正常値:13〜16)、ヘマトクリット値が48%(正常値:38〜52)、赤血球数が、4.5×106 / ml(正常値:4.3〜5.8×106)、血清クレアチニン値が 2.5 mg/dL(正常値:0.7〜1.4)。
テオフィリンの血中濃度は、5 μg/ml(正常値:10〜20)、プロカインアミドの血中濃度は、4 μg/ml(正常値:4〜10)であった。
内視鏡検査で、0.5 cm程度の潰瘍が十二指腸で確認された。培養・生検テストの結果、M.H.は、十二指腸潰瘍と診断された。
 この患者の治療および服薬指導に関わる事について、簡潔に記述せよ。


※この問題の解答は、以下のURL に掲載する予定です。
 http://wwwyaku.meijo-u.ac.jp/chem_pharm/mhiramt/EText/Pharmacol/AppTherap.html