更新日:平成16年2月20日
(学会等発表 要旨)
日本薬学会第124年会 (大阪) 平成16年3月29日(月)〜31日(水)
ミカン科Orixa japonica より単離した新キノロンの構造および生物活性
(名城大・薬)○井藤 千裕, 古川 亜希子, 平野 高志, 村田 富保, 金田 典雄, 久田 陽一, 奥田 和代, 古川 宏
(東海学園大)糸魚川 政孝
【目的】ミカン科コクサギOrixa japonica THUNB. は、ジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga
LOUR.)とともに漢方における「常山」の基原植物として、よく知られている。根は解熱、止痛の効果があるとされ、枝葉は、腫れ物、殺虫に使われて来た。
今回、岐阜県可児市にて採集したO. japonica の枝部から、4種の新キノロンアルカロイドを単離、構造を決定したので報告する。
【実験・結果】O. japonica枝部のアセトンエキスをシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび PTLC により分離・精製を繰り返し、既知化合物とともに4種の新キノロン
(1-4) を単離、各種スペクトルデータよりそれらの構造を決定した。単離したキノロンアルカロイドのNO産生抑制活性については、検討中である。
石垣島産Murraya paniculata の成分研究
(武庫川女大・薬)手島 尚子,津川 真弓,立石 明子,松原 理恵,徳丸 茉理子,來海 徹太郎,十一 元晴,
(名城大・薬)井藤 千裕,古川 宏
【目的】 ミカン亜科(Aurantioideae)Clauseninae亜族(Glycosmis, Clausena, Murraya)植物をケモタキソノミーの観点から正しく分類するために、これらに属する植物の成分研究を行っている。Murraya属に関して、木下らは形態学的に極めて多様なMurraya属植物ゲッキツを、クマリンを指標としたM.
paniculataとM. exoticaへの分類を提唱している。我々は、これまでに各地産Murraya属植物の含有成分を検索し報告してきたが、今回、その一環として石垣島で採集したMurraya
paniculata葉部の含有成分を検索し、3種の新規クマリンを単離し、それらの構造を明らかにしたので報告する。
【方法・結果】 石垣島で採集したMurraya paniculata葉部のアセトンエキスをシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよびPTLCを繰り返すことにより、数種の既知物質と共に新規クマリン(1,2,3)を単離した。それらの構造は各種スペクトルデータの検討により決定した。
薬学ハイテク・リサーチ・センター整備事業
環境重視型創薬研究プロジェクト
第8回研究成果報告会 平成16年1月10日(土)
ミカン科Murraya属植物から新規ニ量体カルバゾールアルカロイドの単離・構造決定と生物活性評価
(名城大・薬)井藤 千裕, ○古川 宏
ミカン科Murraya属植物は、台湾では、古くから民間薬として鎮痛および局所麻酔を目的に使用される他、湿疹、リウマチなどの治療に用いられたり、インドではM.
koenigii(L.) SPRENG.の新鮮な葉部がカレーの必須の材料として使用されたりしている。これまでの化学的成分研究から、本属植物がカルバゾールアルカロイドを主成分とする種とクマリンを主成分とする種とに大きく2つに分けられる可能性を見い出してきた。
今回、バングラデシュにて採集したM. koenigiiの葉部について成分を検索、既知カルバゾールアルカロイド17種とともに新規二量体カルバゾールアルカロイド6種および新規カルバゾールアルカロイド2種を単離し、各種スペクトルデータより構造を決定した。二量体カルバゾールアルカロイドの内、biskoenigine
(1) は、キラルカラムCHIRALPAK AD-H にてアトロプ異性体のほぼ 1:1 混合物であることが明らかとなり、室温で分離することができるが、加温により容易に異性化することが判明した。1、2を除く二量体4種については、それらの1Hおよび13C-NMRスペクトル
からジアステレオアイソマーの混合物と考えられる。
単離したカルバゾールアルカロイド14種について、DPPH法による抗酸化活性試験を行った。フェノール性水酸基を持つカルバゾールアルカロイドに抗酸化活性が見られ、その位置によって活性の強さが違うことがわかった。二量体構造を持ち、分子内に2つのフェノール性水酸基を持つ
murrafoline-I (2) がビタミンEの約2倍強い抗酸化活性を示した。
カルバゾールアルカロイド10種の発がんプロモーション抑制活性試験においては、β-カロテンと同程度のものが2種認められただけで、ほとんどがβ-カロテンよりも活性が弱かった。がん細胞
(HL60)に対する細胞毒性では、2、3、4に強い活性が認められた。なお、それらの化合物のアポトーシス誘導効果については検討中である。
日本生薬学会第50回年会 (東京) 平成15年9月12日(金)〜13日(土)
熱帯薬用植物より抗発がんプロモーターの探索研究 (24)
マメ科Millettia taiwanianaより単離した新イソフラボノイドの構造および生物活性
(名城大・薬)○井藤 千裕、小島 直樹、古川 宏
(京府医大)徳田 春邦、西野 輔翼
【目的】マメ科 Millettia 属植物は、中国において月経不順、足や腰の痛みや麻痺などの治療、強壮に用いられてきている。演者らは、第119年会日本薬学会において、Millettia
taiwaniana Hayata の枝部より3種の新イソフラボノイドの単離と生物活性について報告した。今回、同植物の葉部について成分を検索し、10種の新イソフラボノイドを単離・構造決定した。
【実験・結果】M. taiwanianaの葉部アセトンエキスをシリカゲルカラムクロマトグラフィーおよび PTLC を用い、分離・精製し、既知イソフラボノイドとともに新イソフラボノイド(1-10)を単離、各種スペクトルデータよりそれらの構造を決定した。単離した化合物の発がんプロモーション抑制活性について、現在検討中である。
第10回日本がん予防研究会 (札幌) 平成15年6月23日(月)から25日(水)
オトギリソウ科 Garcinia 属植物より単離したデプシドン類のがん予防作用について
(名城大・薬)○古川宏, 井藤千裕,
(東海学園大)糸魚川政孝,
(京都府立医科大)徳田春邦, 西野輔翼
【目的】Epstein-Barr virus (EBV)潜在感染ヒトリンパ腫細胞を用いた発がんプロモーション抑制活性の一次スクリーニングにおいて、活性の認められたオトギリソウ科植物抽出エキスについて成分を検索、単離したデプシドン類について発がんプロモーション抑制作用を検討した。
【方法】活性の認められたオトギリソウ科Garcinia neglecta Vieill. の葉部エキスから数種のデプシドン類を単離。それらについて、 in
vitro 試験によりEBV活性化抑制作用を検討した。さらに、その中でより強い活性を認められたgarcinisidone-Aについてin vivo 試験におけるマウス皮膚2段階発がん試験を行った。
【結果と考察】コントロール群では、10週間後にはすべてのマウスに腫瘍が発生、また20週間後にはマウス一匹あたり9.7個の腫瘍の発生が認められた。それに対しgarcinisidone-A塗布群では、10週間後において20%のマウスに腫瘍の発生が、20週間後においてもマウス一匹あたり4.0個と腫瘍の発生が抑えられ、明らかな腫瘍の発生率、腫瘍の数の減少が認められた。
以上のことから、garcinisidone-A はin vitro 試験だけでなく、in vivo 試験においても顕著な抑制効果を示し、がん予防薬としての可能性が示唆された。