著書
鈴木 英次著 「科学英語のセンスを磨くーオリジナルペーパーに見られる表現」
化学同人, 1999年発行 14刷 定価 3000円
なお、本書の中国語訳が2004年に台湾で出版。
鈴木 英次著 李 伯 紀訳 「撰写一篇 専業・漂亮的 ENGLISH 科技文章」
建興文化事業 有限公司, 2004年発行 450元
本書は、雑誌「化学」に1996年1月号から1998年12月号までの3年間に連載した「科学英語のセンスを磨く!」の内容を加筆吟味して、一冊の本にまとめたものである。
次に、本書のはじめの言葉と目次を掲載する。
今日,科学技術の優れた研究開発の成果は,すみやかに国際学会や学術雑誌に発表される.その情報伝達に用いられる言葉は英語が中心であり,英語はまさにグローバルな共通言語といえる.英語を母国語としない科学者も,正確な英語で論文を書き,学会で発表することが不可欠な時代とたっている.また,日進月歩のおびただしい量の情報を正確に読みこなす英語力は,学生時代から培っておかなければならない.
近年,科学英語の重要性がますます増大し,科学英語に関する解説書は数多く出版されている.しかし,英語で書かれた科学論文を統計的データに基づいて,詳細に分析した研究はこれまでまったく行われていなかった.筆者は論文を書くうえで,英語を母国語としない科学者にとってわかりにくい英語の問題点を,コンピュータを利用して研究してきた.研究対象として,アメリカ化学会発行のJournal of Biological Chemistry (1994年)およびJournal of Organic Chemistry (1987年)(それぞれ以下,J.B.C.およびJ.O.C.と略す)を選び,これらの本文部分の英語をそれぞれ約105万語,108万語(ともに約2万4000種)をコンピュータに入力し,これをデータベースにした.この一定量のデータベースのなかでの語句,用法,構文,文型などの使用頻度数および使用確率を求め,これらを基にしてきわめて実用的な定量的研究を行ってきた.この研究の成果はつぎのようにまとめることができる.@使用頻度数から,言葉や表現がどのくらい広く使われ,一般性があるかがわかる.A使用確率により,難解な用法を解明できる方法が見いだされた.B J.B.C.とJ.O.C.の論文は,基本的にはフォーマルな英語で書かれている.しかし,ときにはインフォーマルな言葉や,正規の文法に従わない口語的な表現も混じっていることがわかった.C生物化学と有機化学という隣接した分野の英語の比較研究により,両分野の英語に見られる類似点や相違点,分野の特性などを詳細に解明することができた.このような比較研究は学際的な論文を書くのに重要である.Dこの研究に用いたさまざまな方法は,科学英語のみならず,英語学や英文学,応用言語学などの研究にも応用できると期待されている〔鷹家秀史,須賀 廣,『実践コーパス言語学』,桐原ユニ(1998)〕.
本書が英語で科学論文を書こうとする読者にとって,有益な指針となれば幸いである.
第1章 確率で表す可能性の助動詞の使い方
1-1 可能性を表す助動詞の使い分け
1-2 可能性のcanと能力のcanの違い
第2章 確率で表す副詞の使い方
2-1 可能性を表す副詞・副詞句
2-2 "It is likely that…"の構文
2-3 "Be動詞 + 1ikely to不定詞"の構文
2-4 そのほかの可能性の表現 2-9 動詞を修飾するときの副詞の位置
2-5 接続副詞の位置
第3章 確率で表す副詞の使い方
3-1 わかりにくい冠詞の使い方
一ofで限定される名詞
3-2 定冠詞のつきやすい形容詞 3-6 数量の表現と冠詞
3-3 定冠詞のつきにくい形容詞
第4章 論文でよく使われる熟語
4-1 学問分野に合わせた熟語の使い方 4-2 複数の意味をもつ熟語の使い分け
第5章 根拠・原因・理由の重要表現
5-1 考察,・推論に必要な根拠・原因・理由の表現
5-2 原因・根拠の表現とcanの関係
第6章 覚えておきたい前置詞の使い方
6-1 報告・情報・データ・根拠に連係する前置詞
6-2 研究・調査研究・戦略・方法に連係する前置詞
表現の違い
6-3 証拠・機構に連係する前置詞 6-8 “動詞+from”と”動詞+by”の
用法の違い
6-4 「目的」と「結果」を表すto不定詞の用法 6-9 Byとonが導く副詞句の
位置
6-5 動詞・名詞・形容詞と連係するto
第7章 覚えておきたい形容詞の使い方
7-1 敏感・影響・安定の表現
7-2 同等・等価・同一の表現 7-7 「欠けている」「〜がない」の表現 8
7-3 一致・不一致の表現 7-8 「効果的な」の表現
7-4 類似・匹敵・近隣の表現 7-9 副詞より形容詞が使われるtoo〜to不定詞
7-5 原因・必要・十分・特異・利用・有用の表現
第8章 形式主語Itを用いる重要表現
8-1 1t〜thatの用法
第9章 名詞型の選択および動詞と名詞の使い分け
9-1 主語にする「名詞型」 9-3 名詞優先型の名詞
9-2 動詞優先型の動詞
第10章 注意すべき代名詞の使い方
10-1 論文中でルールは厳密に 10-2 人称代名詞とweの表現
守られているか
第11章 覚えておきたい程度・数・量の表現
11-1 程度・数・量を表す形容詞 11-5 論文でよく使われる数・量の熟語表現
11-2 程度・数・量を強調する副詞 11-6 「ほとんど」「おおよそ」の表現
11-3 比較級を強調する副詞 11-7 「約」「おおよそ」の使い分け
11-4 論文では使われない数・量の熟語表現
第12章 注意すべき動詞の使い方
12-1 Reportと describeの用法 12-10 Useのおもな用法と連係する表現
12-2 Be動詞+able to不定詞の用法 12-11 Expectのおもな用法と関連する表現
12-3 Perform, carry outの用法 12-12 Do+名詞およびmake+名詞の用法
12-4 Examine, investigate, testの用法 12-13 似ているestablishとconfirmの用法
12-5 Attempt, tryの用法
12-6 Be動詞+to不定詞の構文
12-7 Appearのおもな用法
12-8 Seemのおもな用法
12-9 Provedのおもな用法
第13章 注意すべき否定表現-
13-1 「人は〜できない」の表現 13-7 That節を目的語とする複文の否定
13-2 失敗したときの表現 13-8 使われない否定表現
13-3 Littleのいろいろな用法 13-9 None, neither, eitherの用法
13-4 強い否定表現の微妙な違い
13-5 No longer, no further, 13-11 Appear to不定詞,
no moreの用法
13-6 Without, unless, unlikeの用法
第14章 注意すべき接続詞の使い方
14-1 「よりむしろ」「よりほかの」の表現 14-8 目的,結果,程度の表現
14-2 Whether…or, neither…nor, 14-9 「〜のような」「〜のようなもの」の表現
either…orの表現
14-3 接続詞thatの用法
14-4 「〜のかぎりは」の表現
14-5 「するとすぐに」の表現 14-12 Asに連係する表現
14-6 「けれども」「であるが」「ところが」 14-13 The same asの用法
「たとえ〜だとしても」の表現
14-7 「〜してすぐ」「さらにまた」の表現 14-14 接続詞asの用法
第15章 好ましい表現と好ましくない表現-
15-1 好ましくない冗長な表現
15-2 1語で表すほうがよい表現
コンピュータによる科学英語研究の成果を雑誌「化学」に連載講座として掲載する。
鈴木英次著、総説「薬学英語のコンピューター利用による統計的研究」、「薬学雑誌」、119巻、
No9、654〜673、日本薬学会(1999)
鈴木英次著、「知の結集 2001」のP44-P47、2001年、コピーマート名城研究所
鈴木英次著、化学論文のための英作文1「AとBが反応してCを生成した」を英訳してみよう、
化学と薬学の教室、春夏2003、No148、P53-P58、廣川書店
共著書
『わかりやすい薬学英語』(廣川書店)
鈴木英次、西田幹夫 他、わかりやすい薬学英語、 広川書店(1996).
鈴木英次、桜井 寛 他、120パーセント科学英語、化学同人(1994).
鈴木英次 他、別冊化学上手なプレゼンテーションのコツ、化学同人(1993).
鈴木英次、桜井 寛 他編著、新科学英語シリーズ、増補版、JECサービス(1992).
第1巻 化学用語の発音
第2巻 やさしい科学用基礎表現
第3巻 英語論文の演習(1)〜(10)物理化学・電気化学
第4巻 英語論文の演習(11)〜(20)分析化学・構造化学
第5巻 英語論文の演習(21)〜(30)有機化学・生化学
桜井 寛 他、理科系学生のための英語活用術、学術図書出版(1998).
桜井 寛、英語論文表現のコンピュータによる検索と解析、薬学図書館、41(3)(1996).