植物資源から新規抗がん作用物質の発見と応用研究

新規化合物の単離・構造決定と生物活性評価

 

名城大学薬学部 薬化学研究室

古川 宏, 井藤 千裕

 

 新しい生物活性化合物の開発を目指して、種々の植物資源から、新化合物を単離・構造決定すると共に、それらの生物活性評価を行った結果について報告する。

ミカン科植物は、含有する化学成分の多様性から、その成分の構造研究及び生物活性成分の探索の対象として有用な資源である。

今回は、研究対象とした植物の内から、ミカン科Citrus属、Glycosmis 属、Clausena 属植物の内の幾つかから単離・構造決定した新しい化合物について、構造の特異性、およびミカン科植物に含まれているアクリドン、カルバゾールなどの発ガンプロモーション抑制活性について述べる。

(1)ミカン科ミカン(Citrus)属植物の内、C. paradisi (Marsh grapefruit), C. grandis (Hirado-buntan), C. yuko (Yuko)などには、アクリドン、クマリンのそれぞれ二分子が特異な結合様式で結合したアクリドン・クマリン二量体、アクリドン二量体などが数多く含まれており、それらを単離・構造を証明した。

(2)ミカン科 Glycosmis 属植物には、種の違いによって、アクリドン、カルバゾール、キノロン、キナゾリンアルカロイドが含まれているが、G. arborea には、これらすべてのアルカロイドが存在する事が判明した。いずれも、アントラニール酸より生合成されると考えられているアルカロイドである。これらの内、キナゾリンアルカロイドの生合成中間体と考えられる化合物を、G. cochinchinensis から単離したので報告する。

(3)ミカン科 Clausena 属植物からは、特異な構造の C10 テルペノイド側鎖をもつクマリンとともに、C. anisata からは、新しいカルバゾールアルカロイドを単離・構造を証明した。

(4)発ガンプロモーション抑制活性試験・・主にミカン科植物から単離した百二十数種類の化合物について、Raji 細胞におけるTPA 誘導による Epstein-Barr virus 活性抑制効果を指標としたスクリーニングの結果について報告する。