医薬品の適正使用への医薬情報の応用研究

 --患者の訴え (自覚症状) 及び患者背景の評価による副作用の推測--

 

名城大学薬学部 医薬情報センター

榊 原 仁 作

 

 第二次大戦の敗戦後、1955年頃に医薬分業への展望は大きく広がった。しかし、残念ながら医師会側の巻き返しなどにより明治初期と同じく分業寸前で挫折してしまった。以来約40年を経て三度目の分業の機運が高まっている。今回こそ絶対に後退させないで分業完成に到達させるためには、薬剤師の日常の活動が一般市民に理解されなくてはならない。アメリカ合衆国では、入院患者についての副作用による死亡者の統計から推測すると、その死亡者数は、死亡率の第4位を占めているのではないかとされ、日本の新聞にも報道された。日本にはそのようなデータはないが、日本の方がアメリカ合衆国よりも多剤適用が多く、「薬好き」と称せられている実状から考えれば、遥かに多数の副作用による死亡者の存在が推測される。この副作用防止こそ薬剤師の活躍する大切な分野である。副作用の症状が緊急事態として服薬中止せざるを得ないような状態になる前に、副作用の前段の症状をいち早く察知して、医師との連携の下に服薬の中止又は医薬品の変更を行うことが薬剤師業務として重要と考える。

 名城大学薬学部医薬情報センターでは、日本で報告された副作用文献のデータベース化を行っていて、このデータベースには現在、約20,000件の文献を収録している。このデータベースを利用して医薬品の副作用と患者が訴える症状の関連を調査し、それらから副作用をいち早く察知するためのフォーマットを作成する研究を行っている。

 医薬品の副作用報告は、系統的な研究ではなく、治療の途中で図らずも遭遇した事例の報告である。従って記述も全くまちまちであり、担当医師の主観的な断定による客観的な裏付けのない報告も多い。そこで独自の評価法により対象報告を精選した。その上で副作用を臓器別に調査し、それぞれの副作用症状に特徴的な自覚症状を選んで予測に用いることにした。それらの自覚症状、患者背景等に評価点をつけて、評価点から臓器毎に副作用を推測する推測手順を作り上げた上で、それらを総合して全臓器の副作用を一つのフォーマットから順次各臓器別のフォーマットに移行して、系統的に副作用を早期に推測できるフォーマットを作成する予定でいる。

 

1.大津、矢野、榊原他、薬学雑誌、118 (7), 272-286 (1998)