研究紹介
本研究室は、初代田中哲之助教授が着任された昭和29年(薬学部創立)に発足した名城大学薬学部では最も古い研究室です。
主な研究テーマ
- アスペルギルス属真菌感染症
- 非結核性抗酸菌感染症
- サルモネラ菌の病原遺伝子の解析
- 呼吸器感染症起炎菌の薬剤耐性に関する研究
- ヒト組織モデルを用いた病態評価系の確立
研究内容紹介
1.アスペルギルス属真菌感染症に関する研究
アスペルギルス属真菌による呼吸器感染症は、日和見感染症、抗菌薬投与による菌交代症などにより起こります。当研究室ではアスペルギルス属真菌が産生するエラスターゼに注目し、その病原性の解明と、肺アスペルギルス症患者の治療法の開発を行う目的で、研究を行っています。
2.非結核性抗酸菌感染症に関する研究
結核菌やらい菌以外の抗酸菌を非結核性抗酸菌といいますが、現在この菌による感染症が中高年女性を中心に急増し社会問題となっています。しかし、感染源や感染経路、また治療を行っても再び悪化することなど未だ不明な点が多い感染症です。そこで、国立病院機構 東名古屋病院との共同研究により、患者さんから得られた分離菌を遺伝学的な手法を用いて解析することにより、より良い治療法の確立を目指して研究を行っています。
3.サルモネラ菌の病原遺伝子の解析
我が国における細菌性食中毒の代表的なものに、サルモネラ感染症があります。この食中毒では下痢や発熱が認められ、時に死亡例もみられます。また、全身感染を引き起こすチフス症においてはワクチンがなく、さらに多剤耐性を獲得したサルモネラが出現し、衛生環境の悪い国々においては大きな社会問題となっています。サルモネラ菌の病原遺伝子の機能を解明することにより、多剤耐性化が問題になっているサルモネラ感染症に対して新たな薬物治療法の確立を目指しています。
4.呼吸器感染症起炎菌の薬剤耐性に関する研究
薬剤耐性菌(AMR)は国際的に深刻な問題であり、対策を怠れば2050年にはAMRによる感染症の死者がガンによる死者数を超えるとも言われています。我々は細菌感染症の中でも特に、呼吸器感染症起炎菌(肺炎球菌やインフルエンザ菌など)に着目し、患者さんから分離された菌の薬剤耐性機構およびその拡散メカニズムを研究しています。それにより有効な治療法や効率的なAMR対策法の確立を目指しています。
5.ヒト組織モデルを用いた病態評価系の確立
多くの感染症は宿主特異性が高く、実験動物を用いてもヒトと同じ感染が成立しないことが多くあります。そこで、我々は3次元培養技術を用い肺組織、皮膚組織を構築し感染症の病態を試験管内で再現することを目指し研究を行っています。この実験系を用いることで感染症の治療効果を指標とした新たな薬物の評価系が構築されることが期待されます。