研究紹介
腫瘍分子医学研究室では、腫瘍の発生・進展機序や生物学的特性獲得の分子機構解明を目指して、分子生物学・細胞生物学的技術を用いた基礎研究を進め、さらには診療グループとともに橋渡し研究を推進することにより、新たな医療の基盤構築に取り組んでいます。
研究内容紹介
遺伝子変異・発現、細胞内シグナル伝達、タンパク質発現・相互作用などを、最新の技術である次世代シークエンサーや質量分析装置を駆使して解析し、代表的な難治性がんである肺癌や膵臓癌を中心として、悪性胸膜中皮腫、乳癌、大腸癌などの克服を目指した分子標的の探索を進めています。
これまでに、世界に先駆けて肺腺癌におけるリネッジ特異的転写因子 – TTF-1/NKX2-1 – の分子機能を報告するとともに、肺癌におけるシグナル伝達因子・転写因子 – SMAD – の分子機能を報告していますが、このような、がんの発症や進展に重要な役割を持つ転写因子は、タンパク質を規定するコーディング遺伝子のみならず、ノンコーディングRNAの発現調節にも重要な働きを担っていることが知られています。そこで、当研究室では、このようながん関連転写因子とノンコーディングRNAの制御機構の詳細を明らかにするため、次世代シークエンサーを用いた解析を進めています。
ノンコーディングRNAの機能に関しては、タンパク質との相互作用が極めて重要な役割を担っています。そこで、当研究室では、質量分析技術や独自の翻訳語修飾タンパク質濃縮技術などを駆使して、がん関連ノンコーディングRNAと相互作用するタンパク質の網羅的解析を進めています。このような相互作用点は、分子治療の標的として期待されるところであり、新たな治療戦略の創出を目指しています。
診療グループから供与される臨床試料を対象に、当研究室が持つ分子生物学的な技術を応用した解析を推進し、インフォマティクス技術を駆使して臨床情報と統合解析することにより、新たな分子診断法の創出を目指しています。