鎮痛薬


痛みの受容と痛覚伝導路

  1. 痛み
    • 知覚神経の終末(自由神経終末)で感受され,痛みを起こす刺激(熱,化学的刺激など)で組織が障害されると,発痛物質(ブラジキニン)発痛補助物質(プロスタグランジンなど)が遊離され,痛み信号を一次求心線維(ニューロン)に化学伝達する.
  2. 痛覚伝導路
    • 新脊髄視床路(二次求心線維):脊髄から視床を通って大脳皮質に刺激を伝える.速くて鋭い急性の痛みを伝達する.
    • 旧脊髄視床路:延髄網様体でシナプスを形成し,視床を通り大脳皮質へ刺激を伝える.比較的遅くて鈍い慢性の痛みを伝達する.



痛みを除去する薬物 --- 図:鎮痛薬の作用点

  1. 末梢でプロスタグランジンの生合成を抑制:非ステロイド性消炎鎮痛薬(解熱性鎮痛薬)
  2. 神経細胞膜のナトリウムチャネルを介するナトリウムイオンの細胞内流入を化学的に遮断して,軸索にそった神経伝達を可逆的に停止(一次ニューロンを遮断)して痛みを除去:局所麻酔薬
  3. 視床を遮断して痛みを除去:非ステロイド性消炎鎮痛薬(解熱性鎮痛薬),麻薬性鎮痛薬
  4. 脊髄1次と2次ニューロンのシナプスの遮断:麻薬性鎮痛薬麻薬拮抗性鎮痛薬
  5. 大脳皮質知覚領を抑制:麻薬性鎮痛薬,(麻薬拮抗性鎮痛薬)



表:諸種鎮痛薬の薬理学的特徴

morphine

pentazocine

levomepromazine

aspirin

分類

麻薬性

麻薬拮抗性(非麻薬)

フェノチアジン系

非ステロイド性
解熱性

鎮痛効力(morophine を1として)

1/3〜1/9

1/2

軽度

ブラジキニン発痛抑制

あり

あり

なし

あり(末梢性)

morphine 拮抗性

なし

軽度

なし

なし

作用部位

中枢性

中枢性

中枢性

末梢性

耐性形成

あり

なし

身体的依存性形成

あり

極めて軽度

なし

なし

便秘作用

あり

なし

なし

なし

呼吸抑制

著明

軽度

なし

なし

起立性低血圧症

なし

なし

あり

なし

外来での作用

不可


参考文献:

・田中千賀子,加藤隆一編,NEW 薬理学 改訂第3版,南江堂,1996

・田中正敏 著,超図解 薬はなぜ効くか,講談社,1998

・花田恵理花 ら,非ステロイド性消炎鎮痛薬,薬局,50/11,77-91,1999