研究紹介

病院薬学研究室は、薬剤師が薬学的専門知識を幅広い医療の現場で活用し、社会へ貢献するための技能の開発と育成を目標に設立されました。従来、臨床薬学教育は学生を医療現場の薬剤部をはじめとする様々な部門へ委託・教育を依存する状態でありました。この教育システムを全面的に見直し、医学教育における臨床教育と同様、薬学教育における「臨床薬学」の確立が研究室の課題です。教育システムとして、臨床コミュニケーション学及び自己学習による問題解決型学習の展開を2本柱として確立するとともに、この方略によって、医療現場における薬剤師職能への臨床技能のフィードバックを図り、そのレベルアップを目指しています。

主な研究テーマ

1) 精神科領域における医薬品の適正使用と精神疾患の病態解析に関する遺伝学的な研究
2) 薬剤師と患者のコミュニケーションに関する研究
3) 薬物療法の開発・確立のための探索的臨床研究
4) 臨床薬剤師教育を推進するための方法論に関する研究
上記テーマについて、医療現場と共同で精力的に研究を行っています。

臨床研究においては薬剤師主導型の臨床試験を立案し、薬物療法の開発・確立や医薬品の安全性の検証などの薬剤師の視点に立った研究をテーマに医療現場の医師・薬剤師と共に行っています。また、医療現場の薬剤師とは臨床薬剤師のコミュニケーション能力向上のための方法論の開発に取り組んでいます。学生には常日頃、研究を通じて科学的な観点から物事を分析し、問題解決能力の基礎を身に付けること、臨床研修を通じて病気だけを見るのではなく人を見て薬剤師が如何に治療に貢献できるかを考えさせることに重点をおいて指導しています。そして何といっても医療人としての使命と責任を果たすべく態度を身に付けた学生を世の中に送り出そうと日々奮闘しています。

研究内容

1) 精神科領域における医薬品の適正使用と精神疾患の病態解析に関する遺伝学的な研究

精神疾患患者のアドヒアランスやスティグマ(偏見・差別的な行動)に影響する因子を分析し、薬剤師を含めた医療スタッフが如何に薬物療法支援に介入すべきかについて、医師・薬剤師と共に臨床現場と直結した研究を行うことは今後の薬剤師の医療における役割を構築していく上で重要な課題であると考えています。さらに、うつ病、双極性障害及び統合失調症などの精神疾患と関連のある遺伝子を探索し、将来における早期診断や治療法に応用可能な研究にも勢力的に取り組んでいます。

2) 薬剤師と患者のコミュニケーションに関する研究

臨床薬剤師のコミュニケーション能力向上のための方法論の開発に取り組んでいます。特に、現在欧米諸国で最も汎用されている医療コミュニケーション分析方法であるThe Roter Method of Interaction Process Analysis System (RIAS) を用いて、薬剤師の対応が模擬顧客のOTC薬の購入時に与える影響、がん患者に与える影響についての研究や、愛知県で実施されている妊娠・授乳サポート薬剤師の養成講座に参加する薬剤師を対象に、講座の中で実施されているCommunication Skill Training(CST)が薬剤師の妊娠・授乳中の患者に対する意識やコミュニケーション能力の変化に如何に繋げるかを検討する研究も進めています。

3) 薬物療法の開発・確立のための探索的臨床研究

患者への継続的な薬物療法支援策において、医療現場の医師・薬剤師と共に治療効果を最大限に高め、副作用の発現を最小限に留めるための調査や臨床試験を実施し、患者の満足度やQOL(生活の質)を向上・維持するための方策の開発・確立に積極的に取り組んでいます。この取り組みは特に精神疾患患者(統合失調症、認知症)や高齢者(在宅ケア)において今後の重要な課題となっています。

4) 臨床薬剤師教育を推進するための方法論に関する研究

多職種連携教育(IPE:Interprofessional Education)の構築を目指して、連携病院と共同し、薬学生が医学生及び看護学生などと症例シナリオを通して互いに学び、相手の専門分野の把握、円滑なチーム医療及びコミュニケーション能力の強化を重視し、この教育システムがより発展するよう取り組んでいます。

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