SPP薬学講座
SPP薬学講座「冷凍野菜中の農薬を検出してみよう」(2008年9月2日、3日)
名城大学薬学講座の報告
本講座は「高校生が大学教育に触れることで、学習の動機づけや幅広い学力の向上を図るとともに自らの適性を見出し、将来の進路意識の明確化や進学目的の形成に繋がること」を趣旨とし、東邦高校(名古屋市)と名城大学が連携したSPP事業のひとつとして平成20年9月2, 3日の2日間にわたって実施したものです。東邦高校の2年生20名が名城大学薬学部7号館2階学生実習室で冷凍野菜中の農薬分析を、にんじんを材料として実験をしました。
講習会の模様は中日新聞(9月3日朝刊)に掲載されました。
実験のねらい
日本の食料自給率は現在39%(H18年度)であり、食の安全供給と安全性が叫ばれています。安定した農作物の供給には農薬は必須のものですが、ヒトに対しても毒性が強いため個々の食品に農薬残留の基準値が定められています。本講座では、野菜や食品中に実際に農薬が含まれているのかどうかを調べます。農薬はppb(十億分率)のオーダーでごく微量含まれている可能性があります。このような微量農薬を同定し、その濃度を測定するためには、どのように野菜などから目的物質を抽出・精製し、どのような機器で分析するのかを体験します。今回、分析の対象とした有機リン系殺虫剤と有機塩素系除草剤の化学構造や物理化学的性質を調べ、これらの性質からどのような抽出方法や測定方法がよいのかについて学んでもらいました。また、マスコミで報じられている毒物混入情報はどのような分析で調べられた結果なのかを、本学3年次学生実習で行っている分析を体験することによって、「こういう分析を行うとわかるんだ」、「どのくらいの濃度から危険なのか?」といったことから素朴概念を形成し、学んだ知識を実生活の中で活かす動機づけをすることをねらいとしました。
実験項目の内容
- 野菜(にんじん)に付着している農薬(2種類をあらかじめ添加)をアセトン抽出した後、フロリジル前処理カラムに付し、粗精製物を得る。
- キャピラリー・ガスクロマトグラフィー(検出器はECDとFPDを用いた)で粗精製物を分析し、農薬を検出・同定するとともに、定量分析を行った。
アンケート結果
受講した高校生の80%が「実験講座は楽しかった」と答え、そのうちの60%が「非常に楽しかった」と答えました。また、受講者の40%が「実験講習会で、科学(理科)への興味が高まった」と答えました。
実験のようす
実験に先立ち、抽出方法についての実習講義を受けました。
にんじんから農薬をアセトンで抽出し、ろ過しています。
抽出液を減圧濃縮するのに用いたロータリー型エパポレータです。
TA(4年生)による実験操作のデモの様子です。
モデル薬局の見学では、薬学6年制教育の実習について説明を受けました。
東邦高校の生徒さん、引率の先生方と、本学薬学部の担当教員・TAとの集合写真です。